昨夜降った雨も上がり、きょうも晴れの気配。
ginnanさんは花蓮に入っているかもしれない。





右側の海はフィリピン海で、台湾西部の平野とは違う景色がつづく。10時ゴロには完全に晴れあがって暑くなってきた。
太麻里から金崙にかけてやや標高があがり、景観は一段とよくなるのだが、アップダウンがこたえる。

太麻里から少し台東より、“邊界客桟”、ロケーションが抜群の喫茶店を発見して立ち寄った。人の気配がしない。覗き込んで呼んでみた。店のオーナーが出てきた、これから店を閉めて出かけるところだと言う。アイスコーヒーが飲みたいと伝えると、少し待てといってデッキへ通してくれた。景色に目を奪われてしまった。使い古された表現だけれど、青い空と水平線、眼下に海岸線、ヤシやバナナの葉の緑。岐阜のジジイが見ると台湾東海岸のこの景色はハワイにしかみえない、完全にミーハーのHiになってしまった。

ほどなく、テイクアウトのアイスカフェオレを出してくれた。海外で氷は危ないといわれるが、渇きがまさってこのさいになっている。
出かけるので店を閉める、階段を降りると休憩する場所があるので、そこへ行けと進めてくれた。
ここは宿泊もできる、こういう宿に泊まりたいのだが、予約サイトには出てこないので、直接予約するしかないな、ので、ムリだ。
下へ降りると、木陰にベンチとブランコがあった。ブランコに腰かけて海を眺めているうしろ姿の、ジジイにはまったく似合わない写真を撮ったりした。
外国人が一人降りてきて話しかけてきた。環島組で、私と同い歳、サンフランシスコで自転車を作っているという。フレーマーなのか私程度の自転車いじりなのか定かではないが、ゴールデンゲイト橋をMTBで渡るとも言っていた、日本にも寄ってきた、などとひといきり喋りまくって行ってしまった。

ずーっと一人だと、誰かと話したくなるのだ。
他に、台湾カップルが降りてきて、先の外人と一緒に写真を撮りたいというのでポーズをつくった。あやしい外人と日本ジジイの絵なんぞどうするつもりなのだろう。
駐車場に戻ってみるとけっこう人がいる、こっちへ寄ってきた。話すとややこしくなりそうなので、喋れないと身振りして出発した。
台東市内を避けて知本温泉に宿をとった。つなぎ区間のつもりだったので、50kmと近い。本当はもう少し距離をかせぎたいのだけれどchuさんに配慮した、が、気づいてないと思う。chuさんは短いとも長いとも言わない。
昼のすこし過ぎには知本近くの町に着いた。温泉地とは少し離れている。台東の街中にしておけばより台湾らしくてよかったかもしれないのだが、司馬遼太郎が知本温泉に宿泊していたのでこうなった。この選択は失敗だった。
台東は市街地でさえ閑静で、人通りもすくない、と、司馬遼の紀行にある。この記述に気づいていれば台東市内にしたのだが、宿を検索すると宿代が高くて事前のカード決済のところばかりしか引っかかってこなかった。
少しながくなるが、この旅の宿の予約の話をする。
予約条件の優先順位は次のようになる。
安い、近くに飯屋がある、コンビニも必要。一人一台のベッド、カード決済の先払いでなく現地支払い、駅に近い。Wi-Fiが無料、などの条件で翌々日の予約をする。基本、Booking.comを利用した。
どんな小さな町にも夜市があって夕飯に困ることはなかった。
Booking.com。 出発直前のニュースやnetでこの予約サイトのことが色々報じられていた。実にタイムリーな話で、さっそくginnanさんからLINEで情報が送られてきた。
You Tubeをチェックしてみると、客と.comと宿のトラブルの話がいっぱいでてきた。よく調べてみると、投稿者が同じ人物で、いろんな予約サイトのトラブル話を出している。しかもその口コミの内容が3年前くらいのもので、悪口ばかりを載せている。
口コミほど信用できないものはない。良いも悪いもその9割はフェイクなわけで、Tubeもヒットの数をかせごうとする悪質なもののようだ。取材能力の浅いTVなどのマスコミも浅はかにのせられて放映した、悪質インフルエンサーのヒット数に貢献しただけで、その後まったくnewsを報じていない。
Booking.comは、アムステルダムが本拠地で、毎日世界中で膨大な数の予約・決済がおこなわれている。同様にすごい量のトラブルが発生しているはずだ。これに対して2万人やそこらの従業員で、親切丁寧な電話での対応などできるわけがない、と思った方がいい。
けっしてBooking.comの肩を持つわけではないが、交通事故だと、半分あきらめて解決していくしかない。
口コミとweb上の画像は信用できないので、google mapのビューで入り口または建物正面を確認する。確認しても現地でわからない宿がずいぶんあった。さいわい今回の旅で大外れはなかった、台湾は安心してよい。
netで予約をいれると予約確認メールがオートマチックにすぐ返ってくる。カード決済の場合は二日前なので瞬時におこなわれる。宿との直接のやり取りも可能なのだが、中国語を翻訳しながらでは、とても面倒くさい。
booking.comから、「宿からメッセージが届きました」とメールがくる。中には日本語もあるが、ほとんどが漢字ばっかだ。これを訳して確認はするが、ほぼ返信はしない。
民泊に近い小さな安宿を予約しているので、車で来る場合は駐車場が無い、という内容が多い。また当日の昼頃、だいたいの到着時間を連絡してやる。アルバイトの留守番が一人の宿では、このリコンファームのようなひと手間をしてやらないと、一組か二組の客の到着を半日待つことになる。気の毒なのだが、自転車で走っていると着時間を聞かれてもすぐには対応できない。先の台南の宿、客梢の場合に到着が遅れたのだが、「あなたは遅れているのですか」っと、留守番の青年からのメッセージに気が付いたのは、到着して部屋に入ってからだった。
Agodaというアプリがある。
先のYouTubeの内容も、同じ発信者でBooing.comと同様に悪口が出ている。
Agodaはシンガポールが本拠地で、アジアを中心にオンラインホテル予約を扱う。.comの傘下だという。利用したことがないので知らない。
trivago。日本のアプリかと思っていたが、ドイツだそうで、いまやどこの国かなんてことはどうでもいい時代だ。アジアでの営業は比較的新しく、日本のTVCMもここ数年だ。台湾では大都市のホテルに限られていて、東海岸の小さな安宿では役に立たない。
Expedia。アメリカでtrivagoの親会社。
この手のアプリがたくさんあることを知った。それと、サイトの悪口をUPして飯のタネにしている専門のYouTuberがいることも。
なんでもありの時代なのだ。
KKday。太魯閣の半日ツアーで利用した。
台北が本拠地で、日本にも支社がある。サイトは台湾で使っても、勝手に日本語対応でストレスなく利用できた、基本条項の入力で日本人とするとこうなるのだろう。日本法人は、台湾や香港の訪日客を対象に展開しているという。
太魯閣の予約は三日前にした。予約確定のメールと同時に決済が行われた。
chuさん話。
出発の一週間くらい前のことで、太魯閣観光をしたいといってきた。花蓮に日本人の経営する宿があるのでそこを予約するという。
chuさんは、すぐに予約した。まだ一か月も先の話である、嘉義まではHotelが決まっているが、台南から先の行動がまだハッキリしていない時期にである。日本人なので、現地の情報が聞けるし、宿の女将が案内するツアーがあるので、それも申し込むといってきた。
そんな先の予定はどうなるかわからない。雨とか疲れたとかで、ずれるよと話した。
日本から直接電話をしたらしく、改めてそこらへんの事情を話したら、予約を断られたといってきた。そんな不確定な予約はもっと近づいてからにしてくれ、だろう。
せっかく台湾に来ているのに、日本に寄りついていくのはどうなんだろう。わけがわからなくてジタバタするのも面白いと思うのだが。
chuさんは、コンビニで日本ブランドの飲料水を買い、日本製のおつまみやお菓子を食べていた。
Booking.comに話をもどそう。
Booking.comはユーザー登録をするとき、カードの情報を保全する。スキッパーに対する策になる。今回利用した宿の大半が現地支払いで領収書がない。宿の手違いや悪意で未箔だとBooking.comに請求された場合、カード決済されてしまう。これは負けになってしまう。電話に出てくれるのをづーっと待つしかない。どんな書き込みをしても巨大Booking.comはビクともしないのだ。
先に話した悪質インフルエンサーは世界中にごまんといる、彼らはヒット数を着々と稼いでいる。
知本温泉で最初に予約を入れた宿からBooking.comを通してメッセージが届いた。
枋遼の夜である。
予約の確認のほかに下記の文書がついていた。
「温泉が壊れている。しかし給湯器を用意したので問題はない。あなたは取り消しを望むことができる」と中国語でついていた。
枋寮のコンテナの中でキャンセルをするのに2時間かかった。Bookin.comは宿へ直接話せという。宿かららキャンセルを承知したメールが直接入ってきた。キャンセル料を請求されないか心配するところで、カードの利用明細が届くまでは安心できない。やりとりのメールはスマホにまだ残してある。
もうすぐ2か月になるが、キャンセル料の請求はない。

話を知本温泉にもどす。
コロナのせいか、日本のバブルがはじけたせいか、温泉街には巨大リゾートホテルが廃墟のように立っている。台東郊外の谷あいに位置する温泉地で、立地条件は悪くなそうなのだが、街に入ってすぐ、失敗した感がした。
温泉街の入口近くに水着を売っている露店が数軒ある。後でこの国の大浴場は水着が必要だと気がつく。よく考えてみるとそれが世界標準であって、裸でうろうろするのは日本の奇風なのだ。
宿の前に着いた。google mapで確認してが、目の前には倒産したホテルがある。右にも左にもHotelがあるが、どちらも営業しているようには見えない。温泉街を一回りしたが見つからない。
Family Martで聞いてもわからない。店員の若い娘さんが電話をかけてくれた、これに反応がない。そこへ客が一人入ってきたので若い店員さんが尋ねてくれた。その女性客が、ここだよと教えてくれたのは、最初に確認した廃屋の裏で、そこは二回ものぞいている。コンビニで朝飯を仕込んで、もう一度行ってみると、先の女性客がいた、宿の関係者ではないようだ。予約の宿は「知本温泉旅館」、ホテル玄関の看板は「逸軒温泉天夏」となっている。


表には、「逸軒温泉天厦」、 D、F棟 管理委員會 と表示してある。
この施設は、倒産したホテルで、半分以上を管理委員会?なるところがアパートとして使っている。先の女性客は、そこの住人ようだ。
看板その他、全ての設備・備品が倒産前のホテルのものをそのまま使っている。人がいるのだが、宿の関係者なのか、住人なのか、それともただの通りすがりなのか、まったくわからない。入り口に老人が一人いて、「私はいい人だ」と中国語でしきりに話しかけてくる、物乞いではないようなのだが。
ホテルのドアを一歩でたらそこは街中の同じだとよく言うが、ここはまさにそれだ。
フロントらしきところに婦人が一人いて、スマホひとつでキリモリしていた。
ウロウロしている我々が宿泊客だとわかったか、話しかけてきた。宿泊代を提示して、代金を受け取ると、お金をバックにねじ込んでルームキーを渡し、奥へ消えた。パスポートの提示を求めることなく、領収書もない。この宿が、客が来なかったとBooking.comにキャンセル料を請求すれば、完全に客の負けだ。




それよりも、部屋に行って入れなかった場合、この女性を探せなかったら、もっと大変なことになる。エレベーターは二人と自転車2台が乗った、部屋は5階で、掃除をしている男がいて少し待たされた。部屋は広く、温泉地である証拠にお湯はたくさん出た。水着がなかったし、大浴場だかプールだかを探しに行く気にはならない、部屋から出てこの巨大設備をウロウロする勇気はない。湯舟は大きかったのだが、いつ使われたのかわからないので、シャワーだけにしておいた。シーツがやや湿気っぽくて重かった。
その夜、帯状疱疹を発症した。ここまで、さして疲労感は無かった、特別ストレスも感じてはいなかったつもりだが、わからない。
最初は南京ムシにやられたと思ったが、虫にくわれた痕ではない、痒くなく痛い。一晩で右胸から背中まで広がった。その後、痛みはあったが旅を続けるのに支障があるほどではなかった。整形外科からもらったヒザの痛み止めと、内科医からもらったアレルギーの薬をもっていたので、これらを飲む。
血圧・痛み止め・アレルギー、台湾に来ても薬漬けの老ローダーなのだ。持参した薬が効いたのかどうかわからないが、幸い旅を続けるのに支障がある痛みではなかった。

夕飯の心配をした、この温泉街を二回りしているのだが店は見当たらなかった。街の入り口付近に夜市らしきところがあったので行って見た。提灯がついていたのだが店はなく子供が数人遊んでいた。
「日本章魚焼小吃店」小さな店で男が数人店先で立ち話をしている、怪しすぎる。コンビニでなにか買おうとなって、帰りかけたら。
「大頭目野食館」すごいネーミングの店があった、広くて明るそうなので入った。
東海岸のこの辺りは、山地人のプユマ族やアミ族が昔から住んでいたという。その族長である酋長のことを“頭目”と呼ぶ。大頭目だからさしずめ大酋長になる。
大頭目野食館にはカラオケの舞台があって、この温泉地が賑わっていたころ団体客がホテルからくり出して舞台に上がり、競って歌ったのだろう。

店は大きかった、出稼ぎだろうか、もう少し南方系の女性が一人でフロアーの対応をしていた。台湾の人口は2.300万人だという、人手不足で外国人労働者が多い、その昔、台北の板橋でバスに乗ろうと思い、旅行バッグをもっている周りの数人にたずねたら、みんな外人で分からないポーズをされた、私も外人なのだが。
私たちが入るとステージの照明がついた、ほかに客はいないのに。
ともかくも炒飯が食えた、あとは焼きそばと野菜炒めで定番の夕飯になった。


得体の知れない養殖魚、食べる気になれなかった。炒飯・餃子・焼きそば、日本人は台湾で十分生きていける。
Booking.comは事前に現地調査などしないで宿と契約しているのだろうか、それとも、大都会の高いHotelと違ってこういった地域はどうせヤバイに決まっているので、どうでもいいとの判断で、ヒットの数も少ないし。
こういった宿に泊まれるのも、なんでもありの.comと台湾の旅で面白いのだ。
知本温泉旅館、Zhibin.Wenguan、2,850円。